去る

ゲッターズK

 「吉田さんと叩き合って勝っちゃいました。それが嬉しくて」。
 加藤誓二騎手の初勝利のときのコメント。
 「中央の小坂騎手と知り合いなんですよ。彼の初勝利が武さんと叩き合ってで、ボクは吉田さんですからね」と続けた。

 当時、こんな話もしていた。
 「吉田さんとキャッチボールをしたかったんです」。
 かつて、弥富対栗東で野球の試合をして、その様子がグリーンチャンネルで流れていた。確かミノルがピッチャーをやっていたと思う。

 セイジにとってミノルは“憧れ”だった。

 先月、キングスゾーンの応援で船橋に行った。6Rで名古屋からの転入初戦だったベジータの馬券(複勝810円)を取った。セイジが「左回りの方がいいと思いますよ」と言っていたのが頭に入っていた。鞍上は房の国オープンのスマートエッジで遠征していた吉田稔だった。


 実は今開催が最後の騎乗になる。騎手をやめる。やむなしの家庭の事情。セイジ自身の、おそらく苦渋の決断。今開催のルーム入りの前にケータイでやりとり。ついつい長話になった。

 正直、乗り役としては壁を破れないままだったと思う。しかし、原口調教師もふれていたが、仕事ぶりはまじめで信頼は厚かった。競馬場で見ていても、返し馬を実に丁寧にやっていたのが印象深い。
 「乗り替わっちゃたけど、ほんとはセイジで勝って欲しいんだよ」という厩務員さんもいた。


 こんな話もある。
 「ここ1年ぐらいで2頭、乗っていた馬が骨折しちゃったんですよ。これまではなかったんですけね。初めてボキッという音を聞いてしまいました。ボク、もともと、動物が大好きなんですよ。可哀そうで可哀そうで仕方なかったです。この仕事をしている以上は割り切ってバキバキ乗らないといけないんでしょうけど…。向いていないのかなあ、と思ったりしましたよ」。

 まだ若い。ホースマンとしてのセイジにはいろいろな想いをかけたくなる。しかし、差し迫った第一歩もある。
 ありきたりだけど、「セイジ、あんたなら大丈夫だ」と声をかけた。